PORCHE

Event Report

旬の一皿を求め、ポルシェの
ステアリングを握る
Porsche 1 Day Touring 2026

レポート:モータージャーナリスト 吉田拓生

ガレージに極上のポルシェがいるとすれば、その他に必要なものは愛車のステアリングを握る“理由”だけかもしれません。逢いたいと思っていた旧友、絶景が広がる峠道、そしてもちろん極上の一皿を味わうことができるメゾンといった存在が、そのモチベーションになるはずです。

御殿場を起点として、韮崎の山裾、ブドウ畑の真ん中にあるフレンチ・レストランを訪ね、アラウンド富士を堪能するショートトリップ、Porsche 1Day Touring 2026。6月20日に開催されたこのイベントは、ポルシェを駆るモチベーション、そして愉しみに溢れたものでした。ポルシェの最新モデルでイベントに帯同したレポーターがその模様を報告します。

イベントレポート

必要なのは、ほどよく遠い
“目的地”

ポルシェオーナーであれば誰でも、人生で初めてシュトゥットガルト発祥のスポーツカーに触れた時の感動を覚えていると思います。ドアを開けた時の磐の塊のような凝縮感。走りはじめれば、それまで体感したことのないスタビリティの高さをしっかりと感じることができたのではないでしょうか。

「ついに極上の1台を手に入れた!」そんなポルシェオーナーがこだわるのは、ステアリングを握るための口実=極上の目的地ではないでしょうか。実際にヨーロッパのポルシェオーナーは盛夏に南下して地中海を訪ね、11月になればフランスにボジョレーを求め、雪のシーズンにはクールシュヴェルやサンモリッツといったスノーリゾートを目指すことで愛車との生活を堪能しているのです。

普段、街中のアシとしても完成度の高さを実感できるポルシェですが、休みの日のロングドライブではより高い次元にあるドライビングファンや快適性に触れることができるはず。6月20日、東名御殿場インターにほど近いホテル、マースガーデンウッド御殿場に集まった7台のポルシェとそのクルーは、まるでラリーをスタートするように1台、また1台と走り出していったのでした。

イベントレポート

霧の中に輝く横一線の
テールランプ

御殿場をスタートした一行は富士山の麓を目掛けて北上し、すぐに御殿場バイパスに合流しつつ富士五湖有料道路へと入っていきました。ここは普段はフロントガラス越しに雄々しい富士山を眺めながらドライブできるルートですが、ツーリング当日は生憎の雨模様。それでも曇り空にむかってカラフルなポルシェの一団が駆け上がっていくような、日常とは異なる幻想的な景色が広がっていました。

ドイツのアウトバーンでも、いわゆるシャワーと呼ばれるような通り雨は多く、彼の地のポルシェ乗りはそんな天候をものともせず進んでいきます。今回のツーリングも同じで、パナメーラやカイエンといったAWDモデルはもちろん、911GT3のような尖ったモデルも天候に左右されることなく安定したペースを刻み、中央自動車道を駆け抜けて甲府盆地へと降り立ったのでした。

ツーリングのハイライトともいうべきフレンチ・レストラン、キュイエットは韮崎インターより5分ほどの距離。ゆるい南斜面に広がるブドウ畑の真ん中に、ちょこんと建っていたのでした。

イベントレポート

ブドウ畑の真ん中で堪能する
極上フレンチ

甲府盆地を中心とした地域はフルーツの生産地としても有名であり、甲州ワインもその延長線上にあるといっていいでしょう。磨かれた水と新鮮な空気に包まれた韮崎市穂坂町。そのブドウ畑に囲まれた土地に2003年にできたフレンチの名店、キュイエットは “地のもの”とゆかりの深いレストランです。フランスのパリ、そしてシャンパーニュで修業したキュイエットのオーナーシェフ、山田真治さんが生まれ故郷でもある山梨県に自らのお店を構えたのは必然だったといえるでしょう。

今回はそのキュイエットの駐車場に、雨に濡れ少々逞しい表情を纏ったポルシェたちがずらりとノーズを揃えたのでした。御殿場からの1時間半ほどの高速ドライブはランチに臨むためのちょうどいい準備運動のようなもの。ツーリングに参加したドライバーとパッセンジャーは、瀟洒な建物内にあるリザーブされたシートについたのでした。

イベントレポート

地元の旨味が活きる一皿、
傑出したストーリー

八ヶ岳平飼い放牧卵、甲斐路シャモ、八ヶ岳湧水マス、そして白州たもぎ茸などなど、テーブルに添えられたメニューには地元食材の名前がたくさん含まれていました。また飲み物もノンアルコールの赤ワインを使用した自家製のサングリア、2種類の穂坂産ブドウジュース、八ヶ岳マヴィフレーバー緑茶桃など、こちらも地産地消が愉しめるメニューが揃っていたのでした。テーブルに料理がサーブされるたび、店内に「わぁっ」という静かな感嘆の声が洩れます。一皿ごとに見た目と味が傑出していて、しかしコース全体を俯瞰すれば確かなストーリー性が薫るキュイエットのランチ。デザートも圧巻で、まるでボトルシップのように透明なグラスの中にカラフルな色がひしめき合っていました。白いお皿にはチョコレートのパウダーで仕上げられたPORSCHE文字。ツーリングのランチを締めくくる、これ以上の演出はないといっていいでしょう。食後に女性ドライバーにお話しを聞いてみると「すべてのお料理が繊細で、しかも味わい深くて感動しました。いいお店を教えてもらっちゃいました」とのこと。リピートは確実のようでした。

ワインディング、
雨と霧がもたらした非日常

食欲を完璧に満たされたツーリングの一行はキュイエットを出て、今度は富士山の西側へと向かうセクター2へと入っていきました。ここでのハイライトは標高220mの下部温泉から甲州いろは坂を駆け上がり、標高900mの本栖湖までを一気に駆け上がるワインディングでした。そこはポルシェの一団らしく気持ちよくペースが上がり、しかし雨は若干勢いを増し、道は思いのほかタイト。まさにラリーのスペシャルステージのような非日常のドライビングがドライバーの午後の眠気を吹き飛ばしたのでした。

静かに蒼い水を湛える本栖湖の湖畔を抜け、一行は次なるチェックポイントである道の駅朝霧高原へ。富士山から冷涼な空気が吹き下ろすこの場所で、参加者たちはポルシェオーナー同士ならではのトークに花を咲かせたのでした。お話を聞いてみると、やはり先ほどのツイスティな山道が印象的だった様子で「久しぶりにドライビングに没頭できた気がします!」という満足そうなコメントも返ってきました。

イベントレポート

ニュルを彷彿とさせる景色で
芽生える
新たなポルシェ観

最終のセクター3は朝霧高原から国道139号線を南下して富士宮方面へ。そこから県道180号線、いわゆる富士山スカイラインを駆け上がりつつ、御殿場を目指しました。雨と霧は相変わらずといった感じでしたが、先ほどの甲州いろは坂よりは道幅もあり、カーブも緩やか。まるでポルシェが開発される現場としても有名なドイツ・ニュルブルクリンク・ノルドシェライフェのようなステージでポルシェのハンドリング、そしてパワー感を楽しむことができていました。今回のツーリングの総距離は230kmほど。全てのルートが高速道路であれば快適で速いポルシェにとって容易なコース。それでも実際は3つのセクターに分かれ、それぞれが個性的な走行環境になっており、「普段はここまであしを延ばすことがないのですが、他のポルシェ・オーナーの方とも一緒だったのでロングドライブでも飽きることなく、あっという間だったように感じています。今後もこういったイベントがあれば、ぜひとも参加したいと思っています」というポジティブな言葉をいただけました。普段メディアの中でポルシェに触れ、そのインプレッションを書くことが多い私にとっても、肩の力を抜いてドライビングと食を堪能することができた今回のショートトリップでは、これまで気が付かなかったポルシェの奥深さに触れることができたように感じました。

イベントレポート
吉田 拓生

PROFILE

モータージャーナリスト
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 

吉田 拓生

1972年生まれ、
自動車専門誌の編集部員を経て2005年にフリーランスの自動車ジャーナリストとして活動を開始。
新旧あらゆるモデルのインプレッションを得意としている。
ポルシェも往年のレーシングモデルから最新作まで一通り試乗し、
自動車雑誌、ウェブサイト等に寄稿している。森に棲み、
薪を割って菜園を耕すナチュラルライフの実践者でもある。